チャトズ・ランド
Chato's Land

(英=西・72)

監督 / マイケル・ウィナー
脚本 / ジェラルド・ウィルソン
撮影 /ロバート・ペインター
音楽 / ジェリー・フィールディング
出演 / チャールス・ブロンソン、ジャック・パランス、ジェームズ・ホイットモア

 ブロンソンとマイケル・ウィナーがコンビを組んだ最初の一撃は異色西部劇だった。酒場で白人を殺し、荒野に逃亡した混血インディアンのチャト。町の白人たちは追跡隊を編成してチャトを追う。チャトは正当防衛で横暴な保安官を射殺したのだが、いかなる理由があろうと先住民が白人を殺すことは重罪とされる時代だった。追跡隊はチャトを捕らえるのは難しいことではないとふんでいた。しかし、荒野はチャトの領域だった。野生本能を発揮するチャトは地の利を活かして追跡隊を翻弄する。追跡隊の動きを観察し、隙を突いて一人ずつ葬っていく。焦る追跡隊は暴挙に出た。チャトの家を襲い女を犯したうえ、その女をエサにチャトをおびき出そうとした。が、チャトの怒りの反撃を受ける。狩る側が狩られる側に逆転し、自分たちがチャトの狩場に迷い込んだ獲物であることを悟った追跡隊は、撤退か追跡続行かをめぐり仲間割れを起こす。この事態をも見越していたようにチャトの魔の手は冷酷に迫ってくる。
 クレジット的にみればブロンソン主演なのだが、映画の大半が追跡隊側からの視点になっており、とくに後半はチャトを“姿なき殺人者”という不気味な存在に描いているため、純粋にブロンソン主演映画とは言いづらい。作品全体で考えれば食い足りなさはあるが、決して乱雑に作られた映画ではなく、各キャラクターを際立たせるように丁寧な仕事ぶりがうかがえる。のちにブロンソン&ウィナーによって『狼よさらば』が生まれたことを考えれば、二人のタッグのスタートとなるこの『チャトズ・ランド』は重要な一本といえる。
 また、ホラーチックなテイストになっているが、その実、西部劇を通したベトナム戦争批判映画でもあることも無視できない。つまりチャトはジャングルでのゲリラ戦に長けたベトコンで、蛮行の挙句敵に怯える追跡隊はベトナム戦争時のアメリカ軍。そういう見方をすると痛烈なメッセージが仕込まれていると思う。このような発想が製作当時のアメリカでどのように受け入れられたのかはわからないが、この映画を観てアメリカや白人の横暴さを反省した白人は皆無だろう。とにかくアメリカの開拓史を讃える古き良き西部劇ファンの期待を裏切ったことは間違いない。
 この映画でのブロンソンの男臭さを飛び越えて野生の域に達し、筋骨隆々のワイルドなボディを曝けだしている。追跡隊を率いるクインシー役は西部劇の名悪役ジャック・パランス。チャトとクインシーの一騎打ちやドラマチックな関係などが盛り込まれていたら、もっと娯楽性の高い映画になっていたはずだが、二人のツーショットはない。それどころかジャック・パランスというそれなりに風格ある役者を起用しておきながら、中途半端な存在に終わらせているのが残念。物語がいよいよ佳境に入った時にあっけない死を遂げてしまうのだ。クインシーは南北戦争に南軍兵士として参戦したが、敗戦がトラウマとなっていた。乾いた心を少しでも潤そうとチャト追跡に乗り出した。仲間の蛮行に傷つく良心、敗北した兵士の虚無感、先住民への畏怖、そんな豊かな情緒を持つ人物でもあるのだ。複雑な内面まで作られたキャラクターなのだから、チャトとクインシーが深く絡み合うような関係があったら良かったのに、と思う。ブロンソンとパランスはほぼ同い年。両者とも1920年前後の生まれなので違ってもせいぜい1歳ぐらいで、『チャトズ・ランド』撮影時は50過ぎ。ふたりを比べてみると、いかにブロンソンが年齢に不相応なタフな肉体を持っていたかがわかる。