バイオレント・サタデー
(米・83)出演/サム・ペキンパー
出演/ルトガー・ハウアー、ジョン・ハート、デニス・ホッパー、 バート・ランカスター何が悲しいって、この映画がペキンパーの遺作になってしまったことである。『ワイルドバンチ』『わらの犬』『戦争のはらわた』『ゲッタウェイ』など傑作を映画史に刻んできたペキンパーが、最後に遺した映画が『バイオレント・サタデー』でいいのだろうか? 政治がらみのサスペンスという題材からしてペキンバーが手掛けるべき類いのものではないし、そんな作品でのハイスピード撮影によるスローモーション映像≪死のバレエ≫がかえって虚しい。バート・ランカスター、ジョン・ハート、デニス・ホッパーら渋いところを揃えておきながら、それらを抑えてルトガー・ハウアーに主役を張らすのも何かが違うような気がする。過ぎゆく時間の速さに抗い、古い時代に踏みとどまる男たちの姿がペキンパー映画の美学だし、時代遅れの男たちの哀愁に観客は魅せられてきたはず。北欧系冷血漢のハウアーにはそれを感じさせるものがないような気がする。ロバート・ラドラムの原作『オスターマンの週末』は未読なのでわからないが、恐らく映画は原作を勢いよく端折っているようで、画面だけ観ていると説明過小のところがある。
人気テレビ・キャスター、ジョン・タナー。ある土曜日、彼の家に友人3人がそれぞれの家族を連れて遊びに来る。実は友人らはCIAがKGBのスパイと目する人物たちだった。CIAは事前にタナーに協力を要請し、3人がソ連のスパイである証拠を掴み、場合によってはアメリカ側に寝返させる計画を立てた。CIAはタナーの家じゅうに監視カメラを設置し、家から離れたヴァンの中から様子を監視する。この作戦の指揮を執るのはCIA要員ファセット。彼は米ソのスパイ合戦の中、妻をCIAの策略により殺された。ファセットの真の目的はスパイのあぶり出しではなく、妻を殺させたCIA長官への個人的な復讐にあった。すったもんだの挙句に、利用されていることに気付いたタナーは、ファセットに捕らわれた妻子を救出するため行動を開始するのだった。
ストーリーや設定に無理が多いうえ、監視カメラの映像がひとつのキーになっているにも関わらず、その映像が普通の映画の画面のようにカット割りされたりして興醒めさせる。もしもこの映画がペキンパー以外の監督の作品であるならば、これはこれで一本の映画として許されるかもしれないが、観る側にしてみればペキンパーによるこのような映画は肩透かしもいいところだ。ペキンパーがこだわってきた男の世界、男たちの友情も心意気も描かれない本作はペキンパーの失敗作と断じてもいいだろう。75年の『キラーエリート』から怪しくなり、78年の『コンボイ』ではペキンパー本人がやる気を失い、『バイオレント・サタデー』で幕を引くとは哀しすぎる。