ザ・ワン
(米・02)

監督/ジェームズ・ウォン
出演/ジェット・リー、カーラ・グギーノ、デルロイ・リンドー

  太陽の反対側に地球と同じ環境の惑星があり、しかも地球と同じ進化を遂げたため、地球と同じ世界が存在し、同じ人間が棲息している、という話が『ドラえもん』のエピソードのひとつにあったが、この『ザ・ワン』はもっとすごい。宇宙はマルチベース(多次元宇宙)で、同時進行する125ものパラレルワールドが重なり合っているという。つまり125人もの同じ人間が別次元で生きているのだ。
 125の各宇宙には「モノセロス宇宙」「ツカナ宇宙」「カノパス宇宙」「シャウラ宇宙」・・・という具合に名前があり、違いもあるが、おおよそ似通った社会が存在した。宇宙と宇宙は次元を超えて互いにパランスを保ち、どこかの宇宙に歪みが起きるとすべての宇宙が消滅してしまう。それを管理するのが多次元宇宙捜査局《MVA》である。優秀な捜査官ガブリエル・ユーロウは、別の次元にいる“自分”を殺せば、“自分”の能力がユーロウ自身にプラスされ、他の“自分”全員を殺し終えた時、全宇宙唯一の存在《ザ・ワン》となり、全知全能の力を持てることを知る。ユーロウは宇宙間を繋ぐ量子トンネル《ワームホール》を通って異次元宇宙を駆け渡り、当地で暮らす“自分”を殺し続けていった。そして最後の“自分”はゲイブという警察官だった。ユーロウはゲイブの次元の地球に侵入するが、その野望を阻止すべくMVAエージェント2人がユーロウを追っていた。何も知らず普通に暮らしていたゲイブは、ユーロウとMVAの戦いに巻き込まれていく。
 ぶっ飛びまくった発想のストーリーとしか言いようがない。当然、いい大人が真剣に観るようなレベルではない。ジェット・リーのアクションを堪能するためだけの映画といえる。善玉も悪玉もジェット・リーで、冒頭で殺される男もジェット。要するに全編通してジェット・リーが出っ放し状態なのである。残りの122人の“自分”は写真で簡単に説明されるだけだった。金髪やロン毛やドレッドのカツラを被ったジェットの写真は笑えるゾ。本当か嘘か知らんが、ジェットは『マトリックス・リローテッド』の出演オファーを蹴ってまで、この映画に出たらしい。って判断誤ったな?
 本作以前のジェット・リーには銃が似合わず、ただ拳銃を構えているだけなのに、どこかカッコ悪く感じたものだが、この映画でのジェットのガン・アクションは一応サマになっている。しかも、やたらと銃で殺しまくる。銃による殺戮はジェット・リーのイメージには合わないような気もするが、今回は宇宙いちの極悪人という設定だから、こういう場面があっても不自然ではないと思う。
 ひとりの俳優が複数の役どころを演じるのは香港映画がよく使うネタで、最近もジャン=クロード・ヴァン・ダム主演『レプリカント』(01)なんてのもあった。こういう映画が矛盾だらけなのは当たり前。いちいち細かい事言わずに、馬鹿げたストーリーとキレのあるジェットのアクションのみを楽しむなら、本作は適当かもしれない。最大の見所である、CGを多用した善玉ジェットVS悪玉ジェットのバトルは、細部のアクションまで計算されたうえで作られており、なかなか面白い。善玉と悪玉のカンフーアクションに違いもある。個人的に最も気に入っているのは、悪玉ジェットが左右の手でバイクを一台ずつ持ち上げ、計二台のバイクを武器にして敵をぶん殴ったり、サンドウィッチにしたりするシーン。アニメーションや漫画でならいざ知らず、一歩間違えば大笑いされる超絶シーンを臆面もなくやってくれた。ストーリーそのものがハチャメチャなのだから、映像のほうもこれぐらい思いっきり爆裂していたほうがいい。この映画に相応しいとんでもないラストもある意味カッコ良く、悪玉ジェットのその後に興味が湧く。

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