ソルジャー・ドッグス
(香港・86)監督/ジョン・ウー
出演/エディ・コー、ラム・チェンイン、チェン・ユーサン治外法権をいいことに麻薬組織が牛耳るタイ/ミャンマー/ラオスの国境・“黄金の三角地帯”。タイ政府は組織の撲滅と首領の逮捕を画策し中国人傭兵部隊を非公式に投入する。襲撃と首領の拉致はあっさり成功したが、タイ国境を目指す傭兵たちの前に麻薬組織、国境警備隊、狩猟民族の追撃が立ち塞がる。
こんな粗筋だけ聞くとB級映画独特の面白さ満載の映画だと錯覚してしまったが、思いっきりZ級映画だった。どうしたって空き地のサバイバル・ゲームにしか見えない戦闘シーンの連続で、「いい歳した大人がなにを真剣にやっているんだ」と観ているほうが恥ずかしくなってくる。いきなり傭兵の隊長の家族が登場してきて徹底的にみんなの足を引っ張っているのに隊長は公私混同で仲間を危険にさらす。敵に追われてたまたま逃げ込んだ小屋の住人が、隊長のかつての戦友だったという凄まじい偶然が平気で起きたりもする。さらに絶対タイにはいそうにない狩猟民族が登場してきて「おいおい、ウーよ、そりゃ人種偏見だろが!」と思わずにはいられない。そういう必然性を無視して強引に挿入されたオカズがいちいちマズく、アクション映画どころかゲテモノ映画になり果てている。要するに『男たちの挽歌』以前のジョン・ウーの作品はまったくダメという事に確信が持てる一本なのだ。83年、ジョン・ウーがタイで撮った本作があまりにヒドすぎる内容だったため、クランクアップ前にゴールデンハーベスト社が企画を打ち切ってお蔵入りにざせた。これは至極当然の判断といえる。が、しばらく干されたジョン・ウーが86年に『男たちの挽歌』で大ヒットを記録させると、慌てた同社は「ああ、そうだ、ウーの出来そこないのフィルムが倉庫にあったな。今なら売れるかもしれん」とばかりにウーの許諾を得ずに別の監督に不足部分を撮らせ無理矢理つなぎ合わせて完成させたのが『ソルジャー・ドッグス』である。ジョン・ウーにとっては、「これから」って時に小っ恥ずかしい過去を曝されてしまったわけだが、逆に「こんなの撮っていたヤツがハリウッドに進出できたなんて、世の中なにが起きるかわからん」と関心させられてしまった。一応、ジョン・ウー映画のキーワードである“絆”や“友情”は描かれているのだが、そもそも戦闘中に女房と子供を連れ回す傭兵なんていないだろうし、幼稚園児がじゃれ合っているみたいな傭兵同士の友情というのもかなりみっともない。誤ってDVDを買ってしまった自分が情けない。