処刑人
(米・99)監督/トロイ・ダフィー
出演/ウィレム・デフォー、ショーン・パトリック・フラナリー、ノーマン・リーダスアイルランド系住民の多い街サウス・ボストン。コナーとマーフィーのマクナマス兄弟が法で裁けぬ悪党どもを血祭りにあげる。法を無視して手当たり次第にと悪を叩き潰してゆくヒーローはバイオレンス映画の定番だが、この『処刑人』の主人公ふたりは『狼よさらば』のポール・カージーとはまるで異質の行動原理を持っている。いきなり神の啓示を受けて目覚めるのだが、それは正義と呼べるものではなく、限りなくサイコに近い。殺人に心を痛めることなくゲームを楽しむかのように標的を葬る。かなりエゲツないストーリーなのだが、陰湿さや悲壮感はない。また、宗教的なものや社会問題を一応は引用しているものの、リアリティには欠け、テーマに重さはない。そのせいで気楽に楽しめる映画になっている。兄弟と行動を共にするイタリアン・マフィアの使いっ走りロッコや、兄弟を追う敏腕にして狂気のFBI捜査官ポール・スメッカー、さらには後半に登場する最悪の殺人鬼エル・ドゥーチェを含め、登場人物全員がイカれている。とくに強烈なキャラはウィレム・デフォー演じるポール・スメッカー。人間離れしたゴツい顔でブチギレまくり、自分の推理に陶酔し、あげくにホモだったりする。ガーターベルト着用の女装までして変態ぶりを披露する。コナー役のショーン・パトリック・フラナリー、マーフィー役のノーマン・リーダスが表面的には比較的普通なので、デフォーの存在感は一層際立ち、その異様さには思わず笑ってしまう。本作が監督デビューで当時28歳だったトロイ・ダフィーは、この映画の原題と同名のロック・バンドTHE BOONDOCK SAINTSでも活動する異色の人物だそうで、その音楽的センスを反映させたような作風にはオリジナリティが感じられる。兄弟が巻き起こすバイオレンス・シーンに突入する直前に画面が暗転し、次の場面では警察が現場検証をしている。状況証拠からスメッカーが推理を始め、それが劇中劇のように再現される。このパターンが繰り返されるのだが、スローモーション多用の計算された映像は見応えある。観終わってみれば、実質的主役はむしろウィレム・デフォーだったことに気づく。