シャーキーズ・マシーン
(米・81)

監督/バート・レイノルズ
出演/バート・レイノルズ、レイチェル・ウォード、ヘンリー・シルヴァ

 空撮カメラが捉えたアトランタの街並みにBGM“Street life”がかかるオープニングで、早くもこの映画が只者でないことを確信した。製作されたのは81年だが70年代の雰囲気がバッチリ詰まった刑事アクションだ。囮捜査に失敗し、吹き溜りのような風紀課に転属させられた刑事シャーキーが、偶然、巨大犯罪組織の暗躍を察知する。風紀課の個性の強い仲間たちと捜査チーム“シャーキーズ・マシーン”を結成して、刑事の職務意識以上に巻き返しを計らんとする男の意地で捜査に乗り出した。シンジケートと関係があると思われる娼婦ドミノを監視するうちに、シャーキーは彼女に片思いに似た感情を抱いていく。バート・レイノルズといえばヒゲを生やした色黒のキザ男というイメージが強い。他の男気俳優とは違ってヒロインとのロマンスも濃厚だったりする。鼻の下を長くするレイノルズのニンマリ顔が暑苦しくて好きになれなかったが、彼自身が監督したこの『シャーキーズ・マシーン』の淡いロマンスはイヤらしくない。向かいのビルからドミノを連日監視するシャーキーが、ドミノの暮らしを覗いているうちに彼女に心を奪われていく過程は見事な演出だ(今で言うところのストーカーに限りなく近いが)。盗聴器を通して聞こえてくるドミノの歌声に合わせてシャーキーが口ずさむシーンは、手の届かぬ女にかすかな恋心を抱く切ない男心を切り取った名場面だと思う。それだけでは単なる恋愛映画になってしまうが、そうはならなかった。ドミノを暗殺者から守ろうと体を張るシャーキーの行動力と優しさが際立つのは、本作が良質な男性映画だからだ。敵の手に陥ったシャーキーが拷問で指を切断されるバイオレンス・シーンと、サイコパス殺人者ビリーの存在が映画のタッチを引き締めていく。ビリーを演じるゲテモノ怪優ヘンリー・シルヴァが発する異様さはハンパではない。映画監督バート・レイノルズの手腕が非凡なのは、このビリーのキャラクターをみれば解る。ドミノに母の面影を重ねたり、唯一の肉親である実兄を“I love you !”と言った直後に射殺する。完全に狂っているが、愛情に飢えた悲しき男でもある。この映画の後、シルヴァがB級以下のヒドい映画でキワモノ的演技を披露しようとも、『シャーキーズ・マシーン』でみせた鬼気迫る演技が色褪せることはない。シャーキー率いる“シャーキーズ・マシーン”は高層ビル内でビリーと対決する。重度のジャンキーであるビリーは苦痛を感じず、銃弾を撃ち込まれても死なない。一方“シャーキーズ・マシーン”は二人が倒された。怒りに燃えるシャーキーと荒れ狂うビリーはついに対峙する。呼吸困難になりながら「俺は死ぬのか、生きるのか? お前は俺を殺せない」と言い放つビリー。ハッキリ言ってこの映画が成功したのは、アクの強い脇役たちの存在と、人間臭いバート・レイノルズと痛ましい狂気をみせるヘンリー・シルヴァの熱演によるところが大きい。これ以降レイノルズの監督作品がないのが残念。

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