殺人鬼
10 To Midnight
TV放映時タイトル:真夜中の野獣刑事(米・83)
監督/J・リー・トンプソン
製作/パンチョ・コーナー、ランス・フール
脚本/ウィリアム・ロバーツ
撮影/アダム・グリーンバーグ
音楽/ロバート・O・ラグランド
出演/チャールズ・ブロンソン、ジーン・デイヴィス、リサ・アイルバッハー森の中で全裸の男女が惨殺される猟奇殺人事件が発生した。事件を担当する殺人課刑事レオ・ケスラーは捜査線上に浮かんだ容疑者ウォーレン・ステーシーをマークする。身辺調査の結果、ステーシーは性格異常者で執拗に女性をつけまわすストーカーである事が判明した。決定的な証拠を掴めないケスラーは、ステーシーを強引に尋問するが、大胆かつ狡猾なステーシーは頑として黙秘、起訴に持ち込むことはできなかった。ステーシーが犯人であるのは明らかだが、法的手段が執行できずに焦ったケスラーは、違法と知りつつ証拠を捏造してステーシーを法廷にひきずり出す。しかし、相棒の若手刑事マッカーンは正義感から、ケスラーの違法行為を暴いてしまう。結局、裁判は証拠不十分でステーシー側が勝訴し、ケスラーの刑事としての立場が危うくなる。自由の身になったステーシーはあろうことかケスラーのひとり娘ローリーに狙いをつけていた。ケスラーはステーシーを四六時中監視し、精神的に追いつめられたステーシーはケスラーの尾行をかわしてローリーの部屋に侵入する。間一髪のところを脱出し、助けを求めて走るローリーを、全裸のステーシーが追う。バタフライ・ナイフが襲いかかった瞬間、駆けつけたケスラーが立ちはだかった。銃口を突きつけられたステーシーは「俺は分裂症なんだ。逮捕されてもすぐに釈放さ」と勝ち誇った。警官隊が取り囲む中、ケスラーは「そうはならんさ」と言い放つと引金を絞った。
この映画は79年の『太陽のエトランゼ/灼熱のカボ・ブランコ』から4年ぶりに、ブロンソンとJ・リー・トンプソンのコンビによって作られた。犯人が凶行のたびに全裸になるのだから、ストーカー映画というよりストリーキング映画と呼んだほうがいいかもしれない。開幕直後に犯人の正体を明確にした上で、刑事と犯人の心理的攻防をみせる手法がとられている。『ダーティハリー』と『タイト・ロープ』をミックスしたようなストーリーはスリリングだし、全裸で走る異形の犯人像も描き込まれており、小粒ながらも良く出来たサイコ・スリラーだと思う。少なくとも80'sブロンソン映画では上の部に入るだろう。『荒野の七人』、『レマゲン鉄橋』、『レッド・サン』を手掛けたウィリアム・ロバーツの脚本が大きく貢献している。卑劣な犯人を裁くことの出来ない現実にぶつかる主人公が、逆に容疑者を追いつめて、最後は法を超えた手段でカタをつけるのは、ハリー・キャラハンの流儀と重なる。刑事という公僕の身でありながら「法は犯罪者を保護している」と嘆くセリフが印象的。また、犯人が全裸で凶行を繰り返すのは、異常な性癖ゆえだが、これが衣服に犯行の痕跡を残させないトリックになっているのも面白い。むやみやたらに強引なアクション場面にもっていかず、法廷でのやりとりや、主人公の苦悩を入れて、サスペンス・ドラマ部分がしっかりと作られている。