さらば友よ
Adieu L'Ami
Farewell, Friend

(仏・68)

監督 / ジャン・エルマン
製作 / セルジュ・シルベルマン
原作 / セバスチャン・ジャプリゾ
脚本 / セバスチャン・ジャプリゾ、ジャン・エルマン
撮影 / ジャン=ジャック・タルベ
音楽 / フランソワ・ド・ルーベ
出演 / アラン・ドロン、チャールズ・ブロンソン、ベルナール・フレッソン

 イエー。ブロンソンの代表作として挙げられることも多く、知名度では圧倒的に高いのだが、割と最近まで無意識に敬遠していた作品である。嫌いというわけでないが、積極的に観る気になれずにいた。単純明快なアクション映画好きにとっては、手に汗握るアクション場面がないこの映画はひどく退屈だった。告白すると初めて観たのは十代で、ブロンソンとドロンがみせる大人の男の美学とかが理解できなかったというのが実際のところだろう。早い話、ガキにとってはブラックコーヒーみたいな映画なのだ。わかり易いアメリカ映画でのブロンソンがのほうが好きだし、フランス映画独特のテンポや“間”、説明過小のストーリー、オシャレなつもりらしいアートめいた演出、そして飄々とノリが軽いブロンソンに違和感を覚えたりもした。イエー、イエー言ったり、いきなりドロンをぶん殴ったり、閉じ込められた地下室のドアをドンドコと大太鼓を叩くような動きをするブロンソンが明らかにヘンテコ。いい歳こいたオッサンたちが何やってんだ、ったく! などと思ったものである。
 かつて二枚目俳優の代名詞的存在だったアラン・ドロンを、思いっきりゴツ顔のブロンソンが完全に抑えて観客のハートを掴むとは痛快としか言いようがない。おフランスのキザな優男よりも、修羅場で叩き上げられてきた野性的な男がカッコいいなんて、スカした世間に一撃喰らわしたようで気持ち良い。イエー! アラン・ドロン目当てだった当時の女性客は、ブロンソンが放つ強烈な熱気にむせ返ったに違いない。男性客はグラスにコインを落とす遊びを一度はトライしているハズ。てなわけでDVD購入を機に真剣に観てみた。イエー。
 改めて観ても「あれ?」と思ったり、プッと吹き出しそうになるシーンはある。例えば、ドロンが忍び込んだビルに、何故ブロンソンがフラリと現れたのか?は今もって謎だし、空港でドロンを警察から逃がそうと突然ブロンソンが「イエーッ!」と叫んで壁をガンガン叩きだす場面は思わず笑いそうになる。そもそも地下室で繰り広げられる二人の行動もズッコケまくりで、夜の学校に忍び込んだ中学生レベルのそれに見えなくもない。しかし、この際そんなことはどうでもよい。この『さらば友よ』の“顔”ともいうべき、ドロンがブロンソンの煙草に火をつけるラストシーンの粋さが、すべてを吹っ飛ばしてくれる。ゾクゾクするこのシーンを観るために、それまでのストーリーが用意されていると言ってもいいぐらい。視線を合わすことなく無言で交わす男同士の心意気。こんなイカした映画を激しいアクションがないからつまらんと切り捨てていた自分は一体何なのか? 馬鹿? なんてこった! おのれの浅さはかさを痛感した。地下室での暑苦しい2人芝居よりも、脱出してからラストまでが素晴らしくスリリング。現在入手できる正規DVD,ビデオはいずれもフランス語音声だが、ブロンソンの自声が聞ける英語ヴァージョンか大塚周夫氏の日本語吹き声版を観てみたい。また印象が変わるだろう。