ニューヨーク1997
(米・81)

監督/ジョン・カーペンター
出演/カート・ラッセル、リー・ヴァン・クリーフ、アイザック・ヘイズ、ハリー・ディーン・スタントン、アーネスト・ボーグナイン

 1988年、合衆国政府はマンハッタン島全体を巨大な監獄に指定した。1997年、大統領の乗ったエアフォース・ワンがテロリストにハイジャックされマンハッタン島に墜落。大統領は一命をとりとめたが島の囚人を支配する帝王デュークに拉致されてしまった。デュークは政府に対し大統領の生命と引き換えに全囚人の解放を要求する。当局は大統領救出作戦に伝説のアウトローにして死刑囚スネーク・プリスケンを送り込む。免罪を条件にミッションを引き受けたプリスケンだが、24時間以内に大統領をマンハッタン島の外に連れ出さなければ体内に埋め込まれた毒入りカプセルが破裂してしまう。単身マンハッタン島に潜入したプリスケンは救出作戦を開始。しかし、タイムリミットは刻一刻と迫っていた。
 本作と『ゴーストハンターズ』(86)を観れば、ジョン・カーペンターのセンスが中学生程度であることは明白。この映画は面白い。エラの張ったカート・ラッセルがアイパッチと無精髭でアウトローに扮し、廃虚となり凶悪犯罪者がひしめく巨大刑務所と化したマンハッタン島に殴り込みをかける。どういう神経していれば、こんなストーリーを思いつくのだろうか。カーペンターは74年にチャールズ・ブロンソン主演の『狼よさらば』を観て、この映画のアイデアを得たというが、そんなのウソっぱちだとしか思えない。凌辱された妻子の復讐のため殺人者に変貌してゆく男の物語をシャープに描いた『狼よさらば』と、趣味の悪い仮装パーティーといっても過言ではない『ニューヨーク1977』が一体どこでリンクするのか、カーペンターの思考回路は不・思・議。が、ある意味この映画はそこいらの映画より面白いと言える。観客にボヤボヤしている暇を与えぬほどアクション&大爆笑シーンの連続なのだ。キャラクターの人物描写などあるわけない。そんなものに時間を割くよりもアクション・シーンを盛り込んだほうが、こういう映画を好む観客にはウケが良いからだ。また、カーペンターと付き合ったばかりにB級俳優の烙印を消せないカート・ラッセル以上に仕事を選ばぬ連中ばかり集めたキャスティングにも唸らされる。スネーク・プリスケンをバックアップする刑務所々長ホークを演じるのはマカロニウエスタンで悪名を馳せたリー・ヴァン・クリーフ、悪の帝王デューク役は、『黒いジャガー』のテーマ曲をヒットさせたソウル・シンガー、アイザック・ヘイズが演じている。マンハッタン島の中なら何でも知っているタクシー運転手キャビーにアーネスト・ボーグナイン、プリスケンに味方する知恵者ブレインにハリー・ディーン・スタントン、さらに目玉は、かつてアントニオ猪木と戦ったこともある、“実際に試合で2人殺した”を売り文句にしていたプロレスラー、オックス・ベイカーがまんまプロレスラー役で登場する。とりあえず1997年はとうに過ぎ、21世紀の今も幸か不幸かマンハッタン島は監獄になっていない。カーペンターの描いた未来が現実にならなかったわけだが、2001年9月11日、世界貿易センタービルにハイジャックされた旅客機が突っ込み世界を驚愕させる事件が起きた。この『ニューヨーク1997』が抱腹絶倒の映画であることには違いないが、テロリストにハイジャクされた飛行機がマンハッタン島に墜落したり、プリスケンがグライダーで世界貿易センターに着陸したりと、完成から20年後に起きる事件と関係の深いキーワードが含まれていて、笑うに笑えない作品になってしまった。
 ちなみにカーペンターは自分の映画には自分の音楽を使いたいらしく、自身の作品の音楽を多く手掛けている。本作の音楽もカーペンター本人によるもの。シンセサイザー一台で作ったようなセコい音楽だが、不思議と耳にこびりつく。

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