メカニック
The Mechanic(米・72)
監督 / マイケル・ウィナー
製作 / アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ
脚本 / ルイス・ジョン・カリーノ
撮影 / リチャード・H・クライン
音楽 / ジェリー・フィールディング
出演 / チャールズ・ブロンソン、ジャン=マイケル・ヴィンセント、キーナン・ウィン子供の頃、テレビで観た記憶があるのだが、中身はほとんど忘れていた。かすかに覚えていたのは、標的をバイクで追い詰めて崖から転落させる場面、空手道場で日本人空手家が相手を半殺しにする場面、そして「そんなのアリ?」のラストぐらい。成人してからビデオを探したが、版権の問題で日本版ビデオはリリースされてなかった。ようやくビデオがリリースされたのはだいぶ後になってからで、改めて見直してみると、見せ場と見せ場の繋ぎの悪さが目につくものの、のちにウィナーがブロンソンを使って(またはその逆)乱発した作品と比較すれば、段違いに濃密に作り込まれているのは事実。標的になる相手の行動を事前に調査する“仕込み”の場面もちゃんと用意されている。ブロンソン演じる主人公アーサー・ビショップは“組織”に属する殺し屋で、緻密に計算された仕掛けで相手を殺すことから“メカニック”の異名をとる。映画の冒頭でいきなり、ビショップは標的となる男の部屋に忍び込み、紅茶のパックの中に睡眠薬を混入し、本棚にプラスチック爆弾を仕込み、コンロのガス管を硫酸で溶かす。男が部屋に帰ってきてコンロに火を入れ、紅茶を飲んで昏睡状態になる。ビショップは向かいのホテルの一室から、仕掛けたプラスチック爆弾を狙撃して部屋ごと男を爆殺した。この一連の流れを一切セリフなしで、ブロンソンの手先の動きを見せることで殺しのテクニックを説明するあたりが、ウィナーが最も力を入れたところだろうが、よく考えてみると、こんな手間暇かけずに直接本人を狙撃したほうが合理的だと思う。殺し屋といえばストイックなキャラクターと相場が決まっているが、このビショップは少し異常。優雅な暮らしを好み、娼婦を買えばストーリー・プレイを要求する。恩人すら無感情に殺す冷徹さはまさにメカニック。さらに殺した相手の息子スティーブをパートナーに仕立てるのもサイコパスゆえ。スティーブには殺しの素質があったが、ある意味ではビショップ以上に冷血だった。演じているのは若き日のジャン・マイケル・ヴィンセント。スティーブは組織からビショップ抹殺指令を受ける。ビショップはそれを知りながらもスティーブと行動を共にする。しょせん殺しを稼業にする男たちの間に友情など生まれるはずもなく、一瞬でも人に心を開けば命とりになる。この映画でのウィナーの手腕はボケ始める前なので、非情な世界がそれなりに描けていると思う。改めて観て気づいたのだが、ビショップのガウン、スティーブのマスタング、二人が乾杯するワインなどに、赤がポイント的に使われている。
