| マッドマックス/サンダードーム Mad Max Beyond Thunderdome (豪・85) |
| 満を持して公開されたシリーズ第3弾は、世界に先駆け日本で初公開とあいなった。しかし、その内容は残念ながら期待を裏切るものだった。ここには前2作で確立されたバイオレンス・ヒーロー、マックスの姿はない。アメリカのメジャーが出資しただけにスケール・アップしているのだが、どことなくズッコケ・キャラのマックス同様に映画のトーンがライトになり、ハード・バイオレンスの代わりに、まるで『グーニーズ』ばりのチビッ子冒険アクションに仕上がってしまった!
果たしてこれはあの『マッドマックス』の続編なのか?
とりかえしのつかぬ事をしでかしたものだと言わざる得ない。奇をてらったキャスティングは、バーター・タウンの統治者アウンティ・エンティティ役にご存知ティナ・ターナー、当時50歳。マックスの反撃を受けても余裕で「あんたもやるじゃない。Good-Bye
Soldier」と笑ってみせる貫禄は、長年ソウル・ミュージック界の女王として君臨してきたターナーそのもの。音楽界からはもう一人。オーストラリアのロックバンド“ローズ・タトゥー”のヴォーカリスト、アングリー・アンダーソンが親衛隊々長アイアンバー・バッシーを演じ、見た目の不気味さとは反対にコミカルな動きでお茶を濁す。“マスター・ブラスター”のザ・マスターはカルト映画『フリークス』でも有名なミゼット芸人アンジェロ・ロシット。 『マッドマックス2』完成後、83年に飛行機事故により他界したバイロン・ケネディに代わり、ジョージ・ミラーは実績のないジョージ・オギルヴィーを新パートナーに選んだ。このことが影響したのか明らかに『マッドマックス サンダードーム』はシリーズ本来の路線を外れている。アメリカで映画製作を基礎から学んだというジョージ・ミラーの手腕が落ちたとは思わない。むしろ洗練されたスタイリッシュな演出が目立つ。ただ、世界中からより普遍的な支持を得ようと、幅広い観客層を意識し過ぎた嫌いは否定できない。作品をヒットさせようとするのは商業映画として当然だが、前2作の魅力でもあった粗削り感が後退しいるのは事実だろう。何故、孤高のヒーローであるマックスが子供たちの子守りをしなければならないのか、大いに疑問だ。開巻直後から車輌を強奪されたり、惨めに町を追放されたり、クラック・イン・ジ・アースの子供に手を焼いたり、とやられっぱなしのマックスの姿は情けない。物資交換の町バーター・タウンを統治する女王アウンティが、トーカッターやヒューマンガス、ウェズに匹敵するほどの強烈な悪役キャラになり得ておらず、親衛隊々長アイアンバーにいたってはルックスから動作までがコント丸出しで、文字どおり失笑を買う結果に終わった。マックスのキャラクターも首をかしげたくなる。あれほど他人との関わり合いを拒絶していたマックスが、今作では面倒見はいいが口数の多い男に成り下がっている。子供たちしかいないクラック・イン・ジ・アースで「ここで静かに暮らす」と宣言したり、チビっ子を肩車したり、妻子を失った悲しい過去があるとは思えぬ呑気ぶりだ。さらに最大の問題点は、マックスが駆るマシンの不在である。とってつけたように用意されているクライマックスのチェイスは、マックスと愉快な仲間たちが乗るトラックと機関車が合体した世にも奇妙な乗物をアウンティたちがグロテスクな車輌で追撃する、というもの。ただでさえ緊迫感のないチェイスだが、ここでもアイアンバーがウケ狙いでしゃしゃり出てくるため完全にドタバタ・コントの様相を呈している。前作のジャイロ・キャプテン役に続いて連続参戦したブルース・スペンスも見事に足を引っ張っている。今回も似たような役どころだが、吉田照美似の馬ヅラでコメディ・リリーフのためだけにわざわざ起用されたのだろうか。タイトルに冠されているように、本作の目玉のひとつは半球型決闘場“サンダードーム”での肉弾戦。運次第で武器の使用も認められるバーリ・トゥードで、一方が死ぬまで戦う“Two man enter, one man leave!”完全決着ルール。マックスとザ・ブラスターの三次元バトルはアイデア的には面白い。しかし、この格闘シーンの導入で映画に広がりを加えようとした製作陣の意図があるとしても、ハイスピードのカーアクションを期待するファンは肩透かしを食らった。 伝説的な英雄像とマックスを重ねた、とジョージ・ミラー自身が語っているように、クラック・イン・ジ・アースに暮らす迷える子供たちを導いて砂漠を進軍するマックスは、人々をユートピアに導く神話のヒーローを思わせる。サンダードームでの決闘はパンクラチオンの引用だろう。ザ・マスターは賢者。バーター・タウンの佇まいは中世の帝国。考えに考えてアイデアを捻出し、練りに練って構成された脚本も解る。しかし、これは『マッドマックス』シリーズなのだ! 灼熱の太陽に熱せられたアスファルト、爆音を撒き散らすエンジン、鉄がぶつかり合って飛び散る火花、火薬とガソリンの匂いがしなくてはならないはず。『顔のない天使』(93)、『ブレイブ・ハート』(96)を自ら監督し、今や世界的名声を得て、しかも『リーサル・ウェポン』をヒット・シリーズにしてしまったメル・ギブソン。子豚を主役にした『ベイブ』(95)、『ベイブ/都会へ行く』(98)を撮ってしまったジョージ・ミラー。この二人が再び手を組んで、『マッドマックス2』を超える『マッドマックス4』が作られる日はいつだ? |
監督 ジョージ・ミラー ジョージ・オギルヴィー 製作 脚本 撮影 音楽 出演 |
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