マッドマックス2
Mad Max 2
(豪・81)

 前作から2年後に完成した第二作にしてバイオレンス・アクションの最高傑作。核戦争後、秩序は崩壊し暴力と無法が支配する時代に生きる人類は資源を求めて壮絶な殺し合いを繰り広げていた。80年代に大量生産された近未来アクションの原型が本作である。近未来SFでありながら、そこには未来を思わせるテクノロジーはなく、過去の産物である破壊されたマシンだけだった。荒廃した未来という設定は今でこそ当たり前になったが、未来が必ずしも文明が発達した世界でないことを提示した最初の映画ではないだろうか。それ以前にも人類が死滅した設定のSF映画はあったが、『マッドマックス2』のSFでありながら宇宙船もサイボーグもレーザー光線銃も出てこない世界観は、将来こんな時代が来るとしたら、その光景はこの映画で描かれている世界に近いのではないか、と思えるほどのリアリティがある。シドニーの西1300キロに位置する小さな町ブロークン・ヒルに砦のような採油所の巨大セットが組まれた。楽天地を目指す人々が占拠していた採油所を凶悪な暴走集団が狙う。その図式は砦に立て篭もる騎兵隊と波状攻撃を仕掛けるインディアンの攻防のようで、西部劇をSFに置き換えている事は言うまでもない。メル・ギブソン自身も「これはマシンに乗った西部劇、ドブの中で戦うスター・ウォーズ」と説明していた。ズタボロの風貌で荒野をさすらうマックスが、採油所の人々に味方して暴走集団と死闘を展開させるのは、マカロニ・ウエスタンでさんざん観てきたストーリーと似ており、一説にはフロンコ・ネロ主演の『ケオマ・ザ・リベンジャー』(伊・77)がマックスのモデルだとも指摘されている。他者を受け容れないマックスのキャラクターはマカロニ・ウエスタンのヒーローたちと重なる。マックスが駆る22輪タンクローリーを追って暴走集団が群がってくるクライマックスのカーチェイスは完全に『駅馬車』を意識している。古典的西部劇とマカロニ・ウエスタンのエッセンスをブチ込み、そこにハードコア・パンクのテイストがミックスされた。
 確かに本作は続編であるが、物語上の連続性は希薄である。1作目の直後に世界戦争が勃発し、2作目はいきなり崩壊後の世界が舞台となっている。マックスとインターセプター以外に前作から継承されているものはない。考えようによっては牧歌的ともいえる片田舎を舞台にした前作と比べ、約10倍もの制作費を投入された今作のスケールは崩壊後の世界全体をも想像させられるほど大きい。舞台設定が激変しているため続編としてではなく独立した一篇としても問題なく観ることができる。マックスのキャラクター面にも1作目との違いが表れている。愛する家族が殺されたことで非情な復讐鬼に変貌したのは、1作目でのマックスが人としての感情をもっていたからである。しかし、今作ではマックスの人格は破綻している。何の目的もなく生命を永らえるため機械的に敵を倒す。マックスに友情を感じていたジャイロ・キャプテンや、マックスに憧れる野生児(ザ・フェラル・キッド)にも心を開かず、頑なに他人を拒絶していたマックスがパッパガーロに「取り引きじゃない。役に立たせてくれ」と言って危険な役目を買って出る場面が印象的だった。
 前作以上に大ヒットした本作の影響は映画の世界だけでは留まらず、80年代前半に台頭してきたハードコア・パンクのバンドにも計り知れない衝撃を与えている。『マッドマックス2』に登場する暴走集団のモヒカン・ヘアや鋲だらけのボンデージ・ファッションはパンクやヘヴィ・メタルのスタイルを取り入れたものであるが、逆に『マッドマックス2』のイメージを歌詞やコンセプトに反映させたバンドは多い。また、プロレス界にも影響を与えている。アニマル・ウォリアーとホーク・ウォリアーのタッグ、“ザ・ロード・ウォリアーズ”はアメリカ公開時のタイトル“The Road Warrior”からとられた名称で、もちろんルックスも本作からインスパイアされたものだ。そういう意味ではヴィジュアル的にも秀でた映画といえるかもしれない。

 先述のマカロニ・ウエスタンとの関係にはさらに興味深いものがある。この『マッドマックス2』以降、世界中から似たような世界観の映画が多数製作された。多くは崩壊した世界で車を武器に戦うストーリーだが、なかでもイタリア映画には露骨に『マッドマックス2』をパクったものが多い。元々オリジナリティのない映画が群雄割拠するイタリア映画である。仮に『マッドマックス2』がマカロニ・ウエスタンを意識しているとして、さらに本作から逆影響された‘イタリア製マッドマックス”のほとんどがヒドい作品ばかりなのは、表面的な作風だけをパクったイタリア人の甘さだろう。前出の『ケオマ・ザ・リベンジャー』は主人公ケオマが切り詰めたショットガンを持ち、疫病により死滅した町にやってきて悪党どもと戦うストーリーで、廃墟の町やケオマの造形は確かに『マッドマックス2』との共通点もある。監督のエンツォ・G・カステラッリは80年代に『ブロンクス・ウォリアーズ』(82)、『マッド・ファイター(カー・バイオレンス)』(83)、『ブロンクスからの脱出』(83)を連発したが、まさに亜流と呼ぶべき惨憺たるものだった。
 なお、国内版DVDには、特典映像にスタントシーンのメイキングが収録されており資料的価値が高い。

監督
 ジョージ・ミラー

製作
 バイロン・ケネディ

脚本
 テリー・ヘイズ
 ジョージ・ミラー
 ブライアン・ハナント

撮影
 デヴィッド・エグビー

音楽
 ディーン・セムラー

出演
 メル・ギブソン
 ブルース・スペンス
 ヴァーノン・ウェルズ
 マイケル・プレストン
 ヴァージニア・ヘイ
 エミル・ミンティ

 


マックス (メル・ギブソン)

荒野をさすらう流れ者。採油所の攻防を目の当たりにして、ガソリンを交換条件にパッパガーロ側に加勢する。


ジャイロ・キャプテン (ブルース・スベンス)
一度はマックスの命を狙うが返り討ちに遇う。しかし、マックスに命を救われて暴走集団撃退に参戦する。


パッパガーロ (マイケル・プレストン)

安住の土地を目指す人民のリーダー。非力ながら暴走集団から精油所を守り続けてきた。そこにマックスが現れて仲間に引き込もうとする。


ザ・フェラル・キッド (エミル・ミンティ)
言葉は話せないが子供と思えぬ戦闘能力を持つ野生児。強いマックスに憧れと親近感を抱く。『マッドマックス2』はフェラル・キッドの回想である。


ヒューマンガス (クジェル・ニルソン)

精油所を狙う暴走集団の支配者。仮面を被った筋骨隆々の男でマグナムを武器にしている。


ウェズ (ヴァーノン・ウェルズ)
暴走集団の最も戦闘的な男。ペット代わりにしていた少年をフェラル・キッドに殺されて怒り狂う。ヒューマンガスも手を焼くほど狂暴ぶりを発揮する。

パンフレット