マッドボンバー
(米・72)監督/バート・I・ゴードン
出演/ヴィンセント・エドワーズ、チャック・コナーズ、ネビル・ブランドチャック・コナーズの顔ってヤバい。正直、あの顔で数々の映画やTVシリーズで主役を張れたのは奇跡的といえよう。とは言うものの、コナーズの顔は根本敬の言うところの“イイ顔”ではない。骨格の作りがゴツいのだ。共演のレイプ魔役のネビル・ブランドのほうがはるかに“イイ顔”していて、まるでチャールズ・ブロンソンとミック・ジャガーをミックスしたような顔をしている。そういえば『復活の日』で草刈正雄を投げ飛ばしてたなぁ、コナーズ。
この『マッドボンバー』、ある意味でのちの爆弾パニック映画の原点的な映画だと断じたいところだが、ケタ外れにショボい。スペクタル度ゼロ。ズバリ言って低予算もいいところ。あまりの安っぽさにTVMかと見紛うほどだが、れっきとした劇場用映画だというから驚く。さらに編集も素人なみに下手で、肝心の爆発シーンには全く迫力がなく、炎や煙の別撮りカットと効果音たけで誤魔化している。
ウィリアム・ドーン(チャック・コナーズ)は娘をヘロイン中毒で亡くしたショックにより、もともと偏屈な性格はさらに破綻をきたし、社会全体を憎悪する。他人の些細な行為を許せず、道端にゴミを捨てる男や、目を合わせずに注文を取るウエイトレスらに、やたらと因縁をつけては威圧的な態度をとる。世間から孤立していくドーンのフラストレーションは、自分を疎外する社会のすべてに向けられた。自家製爆弾で無差別に爆破を繰り返していく。一方、爆破事件を追う刑事(ヴィンセント・エドワーズ)は、爆破現場に偶然居合わせて犯人を目撃したレイプ魔ジョージ・フロマリー(ネビル・ブランド)を締め上げて、ドーンを割り出した。警察はドーンの行動を予測して罠を仕掛ける。凶行を続けるドーンに警察が迫った。間一髪のところで包囲網を破ったドーンは、計画を妨害されたことに怒り、ついにダイナマイトを満載した車でロス市街地を走り回り、市民もろとも自爆しようとする。
大体こんな感じのストーリーなのだが、オープニングからラストまで爆弾魔ドーンを中心に展開していき、警察がいかにして姿なき爆弾魔を捕えるかというサスペンスはない。本作の主役であるにも関わらずヴィンセント・エドワーズ演じる刑事は重要な存在とは言えず、実質的な主役はチャック・コナーズ。人物像描写もドーンの歪んだ内面だけが断片的な回想で描かれる。この映画の決定的にダメな点は、クライマックスと呼ぶに値するものが用意されていないこと。そして臨界点に向かっていく展開にスピード感が欠け、画面から目が離せなくなるような緊迫感がないことが挙げられる。作り方次第ではもっとマシな映画に仕上がっていた筈だが、随所にやっつけ仕事ぶりというか、これが精一杯という限界が見てとれてしまう。
率直に言って、こんなものは失敗作なのだが、何故か心に引っ掛かるものもある。中盤とエンディングで流れるバラードのBGMが、ミスマッチなほど良い感じの曲で、ドーンのどうしようもない孤独と狂気を象徴しているようでもある。
本筋に関係ないところで気になった箇所も挙げておくと、警察に協力するレイプ魔フロムリーがドーンのモンタージュ写真を作成するシーン。輪郭、目、鼻、口が何通りか組み合わせられ、徐々にドーンの顔が完成していく過程が結構面白い。あと、フロムリーが爆殺されるシーンは大いに笑える。自分が撮影した妻の8ミリ映像を自宅で観るうちに激しく欲情、我慢できずに一人で行為に及ぶが、絶頂に達した瞬間、部屋に仕掛けられた爆弾が爆発。文字どおり昇天してしまうのだった。