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マッドマックス的映画 

 近未来を舞台にした映画なのに、文明が崩壊した原始的な世界。こんな単純なアイデアに気付けなかった世界の映画界はこぞって『マッドマックス2』のアイデアをマネた映画を乱造量産しました。とくにイタリアからはマカロニ・ウエスタンを近未来に舞台を置き換えたような、ゲテモノ系作品が登場してきました。そのほとんどはどうしようもない出来で、観るに耐え得るものは少なかったのですが、私自身はこういう映画が嫌いではなく、というか少しでも『マッドマックス2』的な映画を観たい、という期待から多くの亜流映画を観ました。

 

バトルトラック
(1982)
監督 / ハーレイ・コークリス 
出演 / マイケル・ベック、アニー・マッケンロー、ジェームズ・ウェインライト

 

  やっつけ仕事の映画が多かった“マッドマックス2もどき”の中では、なかなか力の入った一本。オーストラリアの隣、ニュージーランドの牧歌的な景色に、黒煙と爆音をあげて黒い戦闘トラックが走る。例のごとく核戦争後の状況設定だが、西部劇的なヒーロー像は渋く、マイケル・ペック演じる主人公ハンターが男らしさと優しさを滲ませる。無法の世界で猛威を振るう略奪者たちが平和に暮らす人々のコロニーを襲う。ハンターはオフロード・バイクを駆使して略奪者たちの武装戦闘用トラックと戦う。クライマックス・シーンは『激突!』を思わせ、勝利した主人公は『シェーン』のラストのように荒野に去っていく。悲壮感より爽快感があり気楽に楽しめるが、残念ながら一般的な評価は低い。ちなみに本邦公開初のニュージーランド映画とのこと。

 

狂い咲きサンダーロード
 (1980)
監督 / 石井聰互
出演 / 山田辰夫、小林稔侍

  ある意味でマックスよりもインパクトのあるコスチュームが最高。スピード感のある映像が疾走し、インディーズだからこそパワフルに弾けるバイオレンス映画。野良犬のようにワイルドな山田辰夫が大熱演し、パンタや泉谷しげる、メジャーデビュー前のザ・モッズのナンバーが全編に流れ、ロックのイメージと暴力が融合した。廃虚の街で暴走族、右翼、警察を敵に回してひとり大暴れする主人公ジン。後に石井聰互監督は「『マッドマックス』からの影響はない」と明言しているとおり、『マッドマックス』とは全く異質の世界観ながら、感覚的な部分での共通項はある。ジンが装着するオートレーサー風のプロテクターは、『マッドマックス2』のウェズよりも早い。作りがセコくて幼稚な面も多分にあり、プッと笑いそうになるヘンテコなセンスも随所に目立ち、ハッキリ言えば穴だらけである。しかし、それをもぶっ飛ばすパワーがこの映画にはあると断言する。主演の山田、小林稔侍、中島陽典、南条弘二以外は無名の俳優ばかりで、その後、映画やTVでは観ることがなかった。美術監督も務めた泉谷しげると石井聰互は続いて、よりパンキッシュな映画『爆裂都市』を作るが、本作とは比べ物にならないさんざんな結果に終わった。

 

爆裂都市 Burst City
(1983)
監督 / 石井聰互
出演 / 陣内孝則、大江慎也、泉谷しげる

  貴重なのはザ・スターリンの演奏シーンぐらいで、観ていてひたすら疲れた。とにかくぶっ壊れてる。バラックが並ぶスラムに溢れる若者たちが、いろんな悪い偶然が重なって大暴動。さらにワケのわからん連中が絡んできて収集がつかなくなる。池袋の文芸座の地下で『狂い咲きサンダーロード』と二本立てで観たのだが、何を勘違いしたのか客席にはバリバリのパンク・ファッションの若者たちが溢れていた。ギグのノリで繰り出してきた心意気は解らないでもないが今思うと小っ恥かしい光景だった。冒頭いきなり戸井十月と町田町蔵(当時)が乗ったサイドカーが猛スピードで爆走するシーンに、思わず胸が高まったが、それ以降は延々につまらない映像が垂れ流されるだけだった。戸井十月の原作小説もトンデモ本だったが、それをも上回るトンデモなさ。そもそも後にトレンディ俳優(嫌な言葉!)としてブレイクするような陣内孝則なんかを主役にするなと言いたい。

 

ウォーターワールド
(1995)
監督 / ケヴィン・レイノルズ
出演 / ケヴィン・コスナー、デニス・ホッパー、ジーン・トリプルホーン 

  各方面から罵倒されまくる海上の『マッドマックス2』。「何もそこまでコキおろさなくても」と同情したくなるほど酷評されているが、観ればそれも納得、確かにドッチラケた。ケヴィン・コスナーが何を考えて、これを作ったのかは謎だが、ストーリーのダサさもさることながら、最大の敗因は主演のケヴィン・コスナーにあると思う。金はかかっている。温暖化により海水が地表を覆い、人類は海上でしか暮らせない時代、という発想は面白いし、一応、派手なアクション・シーンもあるのだが、主人公とデニス・ホッパー率いる海賊との抗争を中心に展開していくのかと思いきや、実は夢の陸地を探し求める冒険ファンタジーで、中盤からは完全に興醒めしてしまった。どんなにコスナーが汚い恰好をしても、「わたくし、映画スターです」というようなイヤミなオーラが漂っている。とどのつまり、コスナーのための豪華なワンマンショーにつき合わされたとも言える。この映画で怪演が空回りしたデニス・ホッパーは第16回ゴールデン・ラズベリー主演男優賞を受賞している。

 

サルート・オブ・ザ・ジャガー
(1989)
監督 / デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ 
出演 / ルトガー・ハウアー、ジョアン・チェン

  要するに『マッドマックス2』からカーアクションを抜き、『不思議惑星キン・ザ・ザ』のシュールさを足したスポ根SF、と言えば語弊があるだろうが、大体そんな感じ。荒廃した原始的な世界は果たして近未来なのだろうか。一握りの人間が支配する、まるで中世ヨーロッパを思わせる社会構造の中、人々はただ生きるためだけに生きる。唯一の娯楽はラクビーとバーリ・トゥードをミックスしたような奇妙な競技。ハウアー率いるチームは草試合に明け暮れながら、メジャー・リーグ入りを目指す。SFだか何だかよく解らん映画だが面白い。殺伐としたなかにも爽やかさもあり、SF的なメカは登場しないが肉弾戦の迫力がある。ハウアーはこの時期を境に人気が急降下していく。そしてハウアー以上にジョアン・チェンの熱演が光る。

 

ワイルド・イースト〜ソビエト最後の映画
(ビデオタイトル:『セブン・フォース/復讐の標的』)
(1993)
監督 / ラシド・ヌグマノフ
出演 / ジャンナ・イシナ、コンスタンチン・フョードノフ、アレクサンドル・アクショーノフ

  何なんだ、コレは? マカロニ・ウエスタン『J&S さすらいの逃亡者』(72)と『殺しが静かにやって来る』(68)との三本立てで観ちまった。ミゼットしかいない村を襲う暴走集団を撃退するため7人の用心棒が雇われる。ってコレは『七人の侍』のリメイクのつもりらしい。明らかに『マッドマックス2』の影響下にあるのだが、時代や場所の設定は明確にされてない。ヘヴィ・メタルみたいなファッションに身を包んだ悪役たちと用心棒たちの攻防がダラダラと続く。すべての面において素人が作ったようなみっともない出来で、観ているほうが恥かしくなること請合い。死ぬまで訪れることはないであろう最果ての国カザフスタンでこんな映画が作られていたとは、改めて『マッドマックス2』の影響力の大きさを感じる。

 


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