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北国の帝王
(米・73)

監督/ロバート・アルドリッチ
出演/リー・マーヴィン、アーネスト・ボーグナイン、キース・キャラダイン

 小学生の頃、よく友達たちと近所の空き地で野球をやって遊んでた。その空き地は有刺鉄線で囲まれて外部からの侵入が禁止されていたが、子供にはそんなものは通用せず、有刺鉄線の隙間から入り込んで平気で遊んでいた。すると必ず土地の所有者であるジジィ(実は遠い親戚)が走って来て「入るんじゃねぇっつってんだろがっ!」と怒鳴られたものだ。最初のうちはジジィが来るたびに逃げ出していたが、そのうち「ジジィを怒らせてギリギリのところで逃げる」という事に熱中するようになった。「いいか、捕まる寸前まで走り出すな」「誰かが捕まりそうになったら援護しろ」などと徐々に真剣勝負として、この“ゲーム”に取り組むようになり、ジジィとガキたちの超低レベルな戦いが繰り返されるようになった。やっている事は低レベルでも当の本人たちはまさに命がけだったのだ、この『北国の帝王』のように。
 この映画は、ホーボー(流れ者のルンペン)たちの間から“帝王”と呼ばれるマーヴィンと無銭乗車を絶対に許さない鬼車掌・ボーグナインの攻防を描いているが、よく考えるとただの無銭乗車の映画なのだ。だからよく考えずに観ると見応えはかなりある。ボーグナインが車掌を務める機関車に意地でも無銭乗車しようとするマーヴィンもかなりの暇人だが、人を殺してまで無銭乗車を許さないボーグナインもかなり意地が悪い。この二人の顔が素晴らしすぎた。こんなゴツい顔した俳優二人を走る貨車の上で戦わせる映画なんだから面白くないわけがない。どちらか一人ではこの映画は面白くなくなる。この二人の組み合わせだから面白いのだ。例えるならグリズリー対マウンテンゴリラ、またはサンダ対ガイラ。クライマックスは走る貨車の上での格闘で、これは実際にスタントマンなしで撮影されているカットも少なくなく文字通り手に汗握るアクション。しかも両雄ともかなりの歳。チェーンを振り回すボーグナインに斧で立ち向かうマーヴィン。FMWでも大日本でもIWAでも見れないデスマッチの迫力だ。
 『北国の帝王』もそうだが、ナチスドイツのパーティーを襲撃する死刑囚部隊を描いた『特攻大作戦』(67)といい、囚人チーム対看守チームのフットボール試合を描いた『ロンゲスト・ヤード』(74)といい、本来なら「そんなこと映画化してどうすんの?」と言いたくなるような題材を、超一級の活劇映画に仕上げるアルドリッチは最高の娯楽映画監督だ。

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