インディアン・ランナー
The Indian Runner

(米・91)

監督/ショーン・ペン
製作/ドン・フィリップス
製作総指揮/トム・マウント、スティーヴン・K・バノン、マーク・ビスクィアー
脚本/ショーン・ペン
撮影/アンソニー・B・リッチモンド
音楽/ジャック・ニッチェ
出演/デヴィッド・モース、ヴィゴー・モーテンセン、チャールズ・ブロンソン

 ショーン・ペンといえば、マドンナの元旦那。最近は大人しくなったようだが、数々のスキャンダラスな武勇伝を轟かせた。本業のほうでは『デッドマン・ウォーキング』の死刑囚役が迫真で見事だった。そのペンが初監督した映画がコレ。ベトナム帰りで不良の弟と、真面目な警察官の兄の愛憎を描いた人間ドラマである。ペンが力を込めて作ったのは随所の味わい深い場面から充分に伝わってくるし、『ザ・ロック』でぐらいでしか印象にないデヴィッド・モースの兄役が妙に魅力的なのだが、全体のトーンがどこか暗く、意味なく間延びしたストーリー進行にややイライラさせられる。そもそもインディアンの物語でもないのに、タイトルの“インディアン・ランナー”とは何を暗示して引用されているのかが謎。いや、仮に説明されたとしても納得できないだろう。どうしようもなく自堕落な生き方しかできない弟を、肉親ゆえに何度も手を差し伸べる兄の姿には、似たような経験を持つ身として微かな共感を覚える。だからこそ観る者の心が救われるラストを期待した。しかし、どうにもやりきれない余韻を残して映画は終わってしまう。ショーン・ペン主演の、デニス・ホッパー監督作『カラーズ/天使の消えた街』(88)のお返しだろうか、デニス・ホッパーがバーテン役で出演している。反逆児同士の友情か?
 さて、ブロンソンは主人公の父親役で出演している。孫に話しかける場面での優しさ溢れる好々爺ぶりは意外なめっけものだったが、自殺という最期を迎えてしまうのには複雑な思いにさせられる。自殺する直前、夜中に息子に電話をかけて、「思い出したんだが、お前の家の、床の仕切りがゆるんでいた。ネジを締めておかないと、誰かつまづくぞ」と告げる。ボケているのではない。最後に息子の声を聞きたかったのだろう。別れの言葉が喉まで出ていながら口には出せなかったのだろう。この描写には無性に悲しくなった。ここでブロンソンがみせる枯れきった男のわびしさは、実生活で愛妻ジルを亡くした直後のブロンソンだからこそ醸し出せたのではないだろうか。