ハンター
(米・80)

監督/バズ・キューリック
出演/スティーヴ・マックィーン、イーライ・ウォラック、キャスリン・ハロルド

  スティーヴ・マックィーンの映画を一本選ぶとしたら、『ゲッタウエイ』でも『ブリット』でもなく、遺作となったこの『ハンター』を迷うことなく選ぶ。日本で劇場公開される直前、80年11月7日にマックィーンは逝った。当時は小学生だったため、初めて観たのはテレビでだった。体を張ったアクションと枯れた男の哀しみをみせ、新しい命に託す思いが込められた、マックイーンの置き土産と呼ぶに相応しい渾身の一本。79年の前作『トム・ホーン』の撮影前に自分が肺癌であることを知り、マックィーンは『トム・ホーン』を最後に映画界から引退するつもりだったという。しかし、興行成績の不振が不満だったのか、最後は現代アクションで締め括りたいと思ったのか、癌に冒された肉体を押して『ハンター』は作られた。現代の賞金稼ぎ(バウンティ・ハンター)ラルフ“パパ”ソーソンの活躍を描いたアクション映画である。正直、マックィーンの最後を飾る作品にしては地味な感じはするが、そのぶん、エキサイティングなアクションが用意されている。白眉は列車の屋根の上でパンタグラフを掴んで宙ぶらりになるシーン。ここは何度観ても文字どおり手に汗握る迫力で、マックィーンの意地をみた思いがした。そしてなによりも主人公のキャラクターに魅了させられる。この映画でのマックィーンは超人的ヒーローではない。老眼鏡がなければ字も読めず、車の運転はドシロウト、犯人を追ってビルの屋上から隣のビルへジャンプするのもためらってしまう。趣味はブリキのオモチャのコレクション。そんな弱さもモロさもある男が老体に鞭入れて奮闘する姿に胸を打たれた。生まれたばかりの赤ん坊を抱いた主人公の笑顔で映画は幕を閉じる。恐らくこれは死にゆくマックィーンからのメッセージだろう。私見だが、スティーヴ・マックィーンというヒロイズムを象徴するような男も癌に勝てなかった。しかし、たとえ自分は死んでも新しい生命は生まれてくる。そんなメッセージが込めれているような気がしてならない。

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