ハートブレイク・リッジ/勝利の戦場
(米・86)出演/クリント・イーストウッド
出演/クリント・イーストウッド、マーシャ・メイソン、マリオ・ヴァン・ピーブルズいい意味で、イーストウッド老いたなぁ、と思った。いよいよ熟成されたいぶし銀の時代に入ったと言うべきか。刈り込んだGIカットもよく似合う。若い頃は一匹狼を気取って突っ走っていたイースウッドだが、ヤンチャな若者たちをビシビシしごくガンコ親父役が違和感ない年代になったということだろう。
主人公トム・ハイウェイ軍曹は叩き上げの海兵隊員。朝鮮戦争は停戦、ベトナム戦争では負けた。つまり「0勝1敗1引き分け」と皮肉られるロートル世代。軍隊や戦争にしか生きがいがなく、酒と喧嘩が好きで戦争以外のことにはまったく役に立たない男である。偏屈だが実は情に厚い男でもある。若い兵士にとっては厳しい上官、そして父性そのものの存在。何故かカール・ゴッチのイメージと重なる。かたやリング、かたや戦場という違いこそあれ、タフな鉄人という安直な理由で勝手に直結させてしまった。軍隊の問題児、もとい問題オヤジ、ハイウェイ軍曹は上層部と折り合いが悪い。軍隊や警察という組織に属していても、上から睨まれるようなアウトサイダーこそイーストウッドに相応しい。
ハイウェイは古巣の第二海兵隊偵察小隊に原隊復帰する。新しい任務は偵察小隊の教育と指揮。しかし、そこはどうしようない連中の吹き溜まりだった。さっそく対立する軍曹と隊員たち。若い兵士をぶん殴って、お前らが生まれる前から、俺は火薬を食ってきた。女も酒も喧嘩も負けん!と凄むイーストウッドにシビれた。世代も価値観も違う両者の反目は続く。海兵隊員としては筋金入りだが、それ以外ではダメダメ人間で、むしろ人情の塊のようなハイウェイに、やがて若者たちは惹かれだす。
無愛想だが実はいいヤツという人物設定や、対立する者同士が結びついていくパターンは、映画としてはありきたりなストーリーだが、普遍的に人々に好まれるのも事実。とありえずクリント・イーストウッドの魅力だけでも最後まで観れる娯楽映画になっている。ハイウェイ軍曹と愉快な仲間たち、という体育会系ノリの青春群像映画ともいえるが、海兵隊の協力のもとで製作されているため、軍隊の思惑が反映されたプロバカンダ的な面も垣間見れる。アメリカ軍最強の軍隊である海兵隊の生活が呑気な部活のように映り、一見すると「海兵隊って、なんか楽しそう!」と勘違いしそうになる。映画の90%ぐらいはハイウェイ軍曹と小隊の若者たちが親子のような関係になっていくまでの様子で占められ、後半の最後のほうはグレナダ侵攻に舞台が移る。悪名高きレーガン時代に勃発した83年のグレナダ侵攻は、戦争というよりも現地アメリカ人救出作戦を名目にした政治的陰謀が絡む小規模戦闘だった。これで一応は戦争映画の体裁になるワケだが、戦争映画というには食い足りなさは残る。いっそのとことグレナダ侵攻そのものをメインにした純粋な戦争映画にするか、軍隊生活のみをコメディ路線で描くか、のどちらかに絞ったほうが潔かったのではないか? 最後の最後に出てくる実戦シーンが付け足しのように思える。
話は変わるが、この映画でマルオ・ヴァン・ピーブルズをはじめて認識した。