鷲は舞いおりた
(米=英・76)

監督/ジョン・スタージェス
出演/マイケル・ケイン、ドナルド・サザーランド、ロバート・デュヴァル

  マイケル・ケイン演じるスタイナー大佐と、ドナルド・サザーランド演じるリーアム・デヴリンは戦争映画史上に残る名キャラクターだと断言したい。この映画と『戦争のはらわた』のせいで、“スタイナー”という名前を聞けば、即座に誇り高いドイツ軍将校を連想してしまう。
 ジャック・ヒキンズ原作のスタイナーは騎士道精神を持つ、読者を魅了せずにおかない人物だった。部下の信奉厚く、信念を貫き通す。マイケル・ケインのスタイナーは原作に近い印象を受ける。この映画は80年代半ばにビデオで観たのだが、同時期に原作小説を読んだ。そのためどうしても映画と小説を比較してしまうのだが、小説は小説で、映画は映画で、どちらも好きな作品。
 最近のリアルで生々しい戦争映画からすると、正直、戦闘シーンに迫力はない。それどころか牧歌的でさえある。純粋に娯楽戦争アクションとして観るよりも、むしろ戦争を背景にした人間ドラマと受けとめるほうが良いかもしれない。なんといってもマイケル・ケイン、ロバート・デュヴァル、ドナルド・サザーランドらによる、奥ゆかしい人間味に溢れた登場人物たちが魅力的。原作通りのセリフが小説版なみに効果的な使われ方をされていたら、もっと良かったはずなのだが。
 クルト・シュタイナーは幾多の戦闘を潜り抜けたドイツ軍の英雄。SS親衛隊に追われたユダヤ人少女を庇ったことで、部下ともども反逆者とみなされた。軍籍を剥奪されたスタイナーらは危険な魚雷艇での重労働を“生きている限り”科せられる。スタイナーは愚かなロマンチストであり、彼に追従する部下たちもまた愛すべき野郎どもである。大戦中のドイツ軍というとナチスと決めつけられがちだが、スタイナー率いる部隊はドイツ国防軍に属しており、悪名高いゲシュタボやSS親衛隊とは、思想的にも精神的にも別である。チャーチル誘拐という馬鹿げた作戦を立てたラードル大佐は懲罰を免除することを条件にスタイナーたちを“イーグル作戦”に引き込む。ラードル役のロバート・デュヴァルも良い。出番こそ少な目だがドイツ軍人らしい実直さと硬さがあり、作戦失敗の責任を負わされ銃殺刑に処されるシーンでの屹然とした態度にゾクゾクした。
 そして、ある意味でスタイナー以上に渋いのがドナルド・サザーランド演じるリーアム・デヴリン。IRA闘士であり、諜報、破壊活動のプロフェッショナル。一見、冷酷で掴み所がないが、敵国の女に恋してしまう弱さも併せ持つ。デヴリンの不敵さと繊細さが混在する人物像に好感が持てる。スタイナーに、何故この作戦に参加するのか? と訊ねられ、「地上最後の冒険家だからさ」と笑顔で言い放つ粋な男。スタイナーもラードルもイカした男たちだが、ロマンチストのデヴリンも良い。
 映画のラストはほぼ原作通りなのだが、よせばいいのに、二匹目のドジョウを狙ったらしいジャック・ヒキンズは、「やっぱ、スタイナーは生きていました」という強引な続編も書いている。当然のことながら映画化されなかった。

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