サルート・オブ・ザ・ジャガー
(米・89)監督/デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
出演/ルトガー・ハウアー、ジョアン・チェン、デルロイ・リンドー結局、この時期に撮られた映画がルトガー・ハウアーにとって最後の輝きだったのではないだろうか? 荒廃した近未来を舞台にしたスポ根映画である本作を観終わった時、実質的な主役はジョアン・チェンだった事を知らされる。未知の世界で自分の力を試したくなるのは男性特有の自然な思いだろう、例えそこが危険な世界だとしても。血気盛んな若造が死にもの狂いで成り上がってゆくサクセスストーリーは男なら熱くさせられるはずだか、その若造を華奢な中国系女優ジョアン・チェンが演じているのだ。いち観客としては、内面が見えてこないハウアーより、等身大のジョアン・チェンに魅力を感じた。画面を観るかぎり、時と場所の設定は明確ではなく、雰囲気からすると核戦争か何かにより秩序や文明が崩壊し、復興しつつある時代。支配者を頂点とする階級制度で社会が構成され、人民のほとんどが原始的な、今でいうところの第三世界のような暮らしを営んでいる世界、らしい。要するに『マッドマックス・サンダードーム』の世界に近い。
23世紀の世界の何処か。なにが楽しくてやっているのか判らんが、犬の頭蓋骨をボール代わりにしたラクビーとバーリ・トゥードが混ざったようなエクストリームなスポーツが、希望のない人々にとっての唯一の娯楽だった。サロウ(ハウアー)率いるチームは対戦チームを求めて転戦し、メジャーリーグ入りを目指す。ある村で対戦したチームには辛うじて勝ったがメンバーの一人が負傷し、かわりに敵チームにいたキッダ(チェン)が新メンバーに加わる。彼らは連日の激闘に明け暮れ、ついには世界で唯一文明が残るレッド・シティでリーグ入れ替え戦に臨むことになる。対戦チームはこれまでとは次元の違う強敵。当然、苦戦を強いられるが最後はド根性で劇的な大逆転勝利を収める。観客は彼らを英雄として称える。しかし、キッダのみがメジャーリーガーとして残留し、サロウたちはまた荒野を、敵を求めて放浪してゆくのだった。
キッダがサロウだけにみせる女らしさがいじらしい。お互い恋心に似た感情を抱き合っていたが、決して交わらぬ生き様ゆえに袂を別つ。敢えて多難な道を選んだサロウが、砂煙の向こうに浮かぶ未知の敵を見つめるラストが余韻を残す。『マッドマックス2』や『ロンゲストヤード』に熱くなれる人には楽しめるかもしれない。『ローラーボール』などとは全く違う近未来スポーツ根性映画。2002年6月、日本版DVDが発売されたが、オリジナルとはラストが異なる。オリジナルのラストではサロウとキッダが別々の道を行く様子が描かれていたが、DVD版では最後の試合に勝利したところでエンディングクレジットとなり、意味合いの違う映画になってしまっている。