最前線物語
(米・80)監督/サミュエル・フラー
出演/リー・マーヴィン、マーク・ハミル、ロバート・キャラダイン、ステファーヌ・オードランリー・マーヴィンの顔がどんなにゴリラチックでも、リー・マーヴィンは断じてゴリラではない。垂れた頬、分厚い唇、長い鼻の下、あの強烈な顔面だからこそ、チャールズ・ブロンソンやアーネスト・ボーグナインと互角に渡り合えたはず。まず「軍曹」ときいて連想するのは『コンバット!』のヴィック・モロー演じるサンダース軍曹か、リー・マーヴィンである。しかも、マーヴィンの場合は「鬼軍曹」である。この『最前線物語』は監督のサミュエル・フラー自身の半自伝的映画であり、ロバート・キャラダイン扮する小説家志望の二等兵ザブこそフラーの分身的キャラクター。ザブがストーリー・テラーとなり仲間や上官の軍曹について語る。マーヴィンの役名は“軍曹(The Sergeant)”。戦闘シーンの描写の甘さは否定できないものの、この映画は愛すべき一本である。マーヴィンの存在感は大きく、『プライベート・ライアン』のトム・ハンクス以上に人間味がある。第一次世界大戦終結直後、投降してきた無抵抗のドイツ兵を刺殺したことがトラウマになっている軍曹は、24年後の第二次世界大戦ヨーロッパ戦線にも第一歩兵師団第一分隊の指揮官として参戦する。古参兵の軍曹は戦場で生き残る術を知り尽くし、若い部下からは時には鬼のように恐れられ、時には父のように慕われる。そして部下たちに「生き残ることが栄光だ」と説く。兵士としても男としても半人前のグリフ、ザブ、ビンチ、ジョンソンはアルジェリア上陸、イタリア戦線、ノルマンディー上陸、チェコと転戦し、死屍累々の戦闘を繰り広げながら成長していく。本作は戦争を背景にした青春群像でもある。イタリア人少年の亡き母親のために棺桶を用意してやったり、戦車の中で妊婦の出産を手伝ったりと、実際の戦場ではあり得ないであろう微笑ましいエピソードは映画だからこそ成立する。さらにフラー独特の演出も顕著で、患者がウロウロする精神病院内での銃撃戦シーンでは異様な空気が漂う。そして極めつけはチェコのユダヤ人収容所開放の場面。遺体を焼く焼却炉の中に潜んでいたドイツ兵と遭遇したグリフは淡々と敵を殺す。軍曹が救出したポーランド人少年と川のほとりで過ごす場面も忘れ難い。少年はおどけて軍曹の鉄兜をかぶる。軍曹は悲しい表情で鉄兜を取り上げた。何気ないシーンだが涙が出そうになるほど切ない。全体的にユーモア溢れる作風ではあるが、リー・マーヴィンの枯れた魅力がドラマ部分を渋いものにしている。最前線にいる者にとって生き残る事が栄光であったとしても、生き残ってしまった者が背負う悲しみは大きい。映画の中盤、“ジムノペディア”をピアノで弾く女の横で淋しげな表情をみせるリー・マーヴィンの姿が胸に染みる。